『思慕』ー2024.03.30
「会いたい」
厳しい寒さが過ぎ桜が次々と咲き始める頃に、そのメッセージは入ってきた。
京都のスマートフォンの画面に映し出された短い言葉からは、送り主の寂しい気 持ちが伺える。 この送り主とは――京都の可愛らしい彼女、大阪だ。
ふたりは昨年秋のデート以来、会えていなかった。どれだけ長い月日が流れた だろうか。お互いの顔を全く見られずにた ただただ恋しい感情が募るばかりだった。
しかし、そんな寂しい期間も今日でおさらばだ。
「今すぐ会おう」
僕も同じ気持ちだ、と言わんばかりに入力し、送信する。
ふと、横の窓に目をやると、満開の桜が青空を彩っていた。
『逢瀬』ー2024.03.30
太陽が暖かく照らす空の下で、遂に交り合う桜と梅の香。久しぶりに見るこい
びとの愛しい顔に、胸がいっぱいになった――
ずっと会いたかった。来る日も来る日も、ずっと相手の事を想いながら過ごして。
そして迎えた当日、それまで慕い合っていたふたりの時間が一緒になる。京都のあたたかな腕が大阪の身体を優しく包み込んだ。
「やっと会えた・・・・・・」
新たな生命が芽吹く季節、春。 蝶が舞い、花が咲き乱れ、全てに心が踊る。
これからの物語を紡ぐように、お互い手を繋いだ。
ふたりの旅はまだ始まったばかりだ。
『二日目の朝』ー2024.03.31
陽が昇り、小鳥のさえずりが一日の始まりを告げる。
「おはよっ!」
大阪の元気いっぱいな声が部屋中に響き渡る。まだ眠たそうな京都の腕をぐいぐいと引っ張り、外出を促す。
大好きな京都とまだ一緒に過ごせる事が嬉しい大阪は、鼻歌交じりに支度をし始めた。
――さて、今日はどこに行こうか?